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ep2 目覚め

Penulis: 根上真気
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-14 17:15:10

【王女復活の章】

まぶたをひらくと、彼女の目に飛び込んできたのは、美少年の白い顔だった。

「......お、王女が、目覚めた!?」

彼女の顔を覗き込んでいた美少年は、小刻みに震えだした。

今の今まで一度たりとも目覚めることのなかった彼女の麗しい寝顔は、決して触れてはいけない神聖な宝石。

それが今、本来の輝きを取り戻して眩い光を放つように、紅い瞳を彼に向けてきたのだ。

「......お、おまえ、だれ?」

彼女は彼を見て言った。しかし彼は何も答えられなかった。

彼女の声を聞いた瞬間、感動が頂点に達し、わずかな言葉が口から出ることすらも困難になってしまったから。

美少年はよろよろと後ずさって床に尻餅をついた。

「?」

何が何だかわからない彼女は、疑問を浮かべながら、ゆっくりと上体を起こした。

頭がボーッとした。

何かとてつもなく長い眠りから覚めたような、あるいは衝撃的な悪夢から醒めたような、感じたことのない気だるさがあった。

「てゆーか、ここどこなんだ。病院なのか......?」

彼女は天蓋のかかった大きなベッドから出て、部屋を見回した。

やけに高い天井。やけに広い室内。

妙に趣きのある西洋の古風な屋敷のような部屋は、とても日本とは思えない。

「お、王女様......!」

やっと立ち上がった美少年が、いきなり彼女の足元へ跪いた。

「え?」彼女はぎょっとする。「な、なに」

「お、王女様。いえ、リザレリス王女殿下!」

美少年の声が広い部屋に響く。

「......は??」

彼女はマヌケな声を洩らして、ポカーンとする。

「私は今すぐディリアス様へ知らせて参りますので、ここでしばしお待ちくださいませ!」

そう言って美少年はうやうやしく頭を下げてから、部屋を飛び出していった。

「な、なんなんだよ、いったい」

寝耳に水とはまさにこのこと。彼女には何が何だかさっぱりだった。

「そもそも、なんで俺が王女様なんだよ......」

そう呟いた次の瞬間、彼女はハッとする。突如としてあらゆる違和感が怒涛のように押し寄せてきた。

「俺......俺じゃない!?」

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